我が立つところ 深く掘らば 何処(いずこ)にも 清泉湧くべしこれは安積得也先生の詩である。東京府の経済部長であり、栃木県知事であり、岡山県知事でもあった詩人、安積先生の詩である。

私は常にこの言葉を繰り返し繰り返し反省させられている。

仕事につまらなさを感じたり、困難にぶつかったり、どこから手をつけてよいかと迷ったりする時、私はこの私の考え方の拙さをこの詩の中に反省するのである。

どんなつまらないと考えられる仕事でも、これをぐんと掘り下げて、掘り下げて、ぶつかってみる時、その中からこんこんと泉の湧き出ることを感じさせられる。

正札つけの仕事などつまらぬ事だと考えるかも知れない。しかし、こんな簡単な仕事のように見えても、これを如何に上手に、インクの色を同じように曲がらないように、手早くやるかということを考えて実行してみると、この仕事の中に無限の興味が湧いてくる。

一見出来そうにもないと考えられる事態にぶつかっても、ジックリとその実態を見つめてそのかかるべき端緒を発見して取りかかってみると、困難なことであればある程、興味ある仕事であることが理解出来る。

現在(いま)自分が立っているその立場を真剣に見つめ掘り下げてみる時、その何処(いずこ)、何(いず)れよりも湧き出る泉があることを知らされるのである。

故・安積得也先生と初代理事長との出会いは古く、戦時中の企業整備の時代でした。以来、お互いに終生、畏友としての絆をもちつづける間柄であったそうです。

初代理事長の葬儀において、友人代表としての安積先生の弔辞のなかに次の言葉があります。

『君の提唱された公開経営の四字は、単なる見識ではなくて、業界の現実を動かすスローガンとなりました。それは勇気と汗と時間を必要とします。然しながら実行は言葉より雄弁です。』

初代理事長が困難なことに相対した時、きっとこの言葉に勇気づけられ、そして向かっていったことが伺えます。

仕事に関してだけでなく、人生への取り組みの行動訓として、今もなお新鮮な言葉として私達を励ましてくれています。

1996年10月